とある看護実習生の話。

大学病院に入院していた時、自分に看護実習生がついた。病院が付属している大学の看護学部の学生である。期間は3週間。当時自分は抗がん剤治療中だったが、大きな副作用もなく暇だったので快く引き受けた。

 

自分についたのは、歯切れがよく快活な大学3年生であった。実習といっても、看護師資格をもっていないので医療行為はできない。そのため、実習の内容は大きく限られてしまう。具体的には、ベッドの掃除やシーツ交換、血圧・体温の測定、シャワー時の点滴部分の保護、食事の配膳といった内容だ。測った血圧や体温は患者の記録として病院には残せず、実習の記録としてのみ用いられる。重症患者や高齢者であれば、シャワーに入れたり、身体を拭いたり、起き上がりや歩行の補助をしたりと忙しくなるようだが、自分には不要だったので、実習中は結構手持無沙汰だったようである(実習後は寝る間を惜しんでのレポート作成で、相当忙しかったようだが)。

 

自分がそれほど手間のかからない患者だったため、実習中彼女はほぼ毎日午後の決まった時間に「お話ししましょ~」と言って、病室に入ってきた。時間のある学生は、患者と積極的に話して患者の心情や病気について理解するよう求められていたようである。それに、そこで話した内容はその日のレポートのネタにもなる。自分は相当暇な時期だったので、それを歓迎した。話し相手ができることはストレス解消にもなる。時間は彼女の都合にもよったが、会話時間は短くても30分、長い日は2時間以上にも及んだ。

 

社会人になって、JDと話すことは滅多にない。人見知りの自分は初めは話題に困ったが、次第に打ち解ける内に互いに多くのことを喋った。他愛もない身の上話からクリスマスプレゼントの話題、なぜ看護師志望なのか、など多岐にわたった。ただ、彼女は病室に遊びに来ているのではない。患者から何かを学び取ろうとしているのだ。そこで自分は意識的に自分が患った白血病という重い病気の話を中心に話した。死の淵にあった白血病発覚時のこと、その時の心情、献身的に支えてくれる家族のこと、造血幹細胞移植時の病態のこと、などなど。特に死にかけたり、造血幹細胞移植を受けた患者の話は滅多に聴けないと思われるので、我ながら彼女にとっては貴重な話だったと思う。自分は入院生活が長いので、他の病院とその大学病院の看護師の違いや、良かった看護師、気に障った看護師の経験といった話もした。

 

そうこうしている内にあっという間に3週間が過ぎ、実習最終日となった。その日は病室に来なかったので、もう来ないのかな…と思っていた。19時頃、実習生とその指導看護師が揃って病室を訪れてきた。実習生は僕に感謝の想いを述べてくれた。彼女はこれまで他にも多くの患者を受け持ってきたが、こんなに話してくれたのは僕だけだったと。看護学生として参考になる話をたくさんしてくれたと。彼女は涙を流しながら握手をしてくれた。なんと指導看護師まで泣いていたので少しびっくりした。自分としては話し相手になってもらえただけで助かっていたのだが、なんだかいいことをしたような気がした。

 

彼女は未だに実習を続けているのだろうか?それとも就活中だろうか?優秀な看護師になってくれることを祈っている。

 

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